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Tetsu Photography

鉄道とカメラの四方山話

第10回 58mm

レンズ

 その焦点距離を聞いたとき、それを理解するのに、私はあまりにも幼かった。

 私の通っていた中学校には「写真部」があり、写真はあまり撮っていなかったらしく、文化祭の展示は、カメラ店でタダで貰ってきたカメラのカタログを並べるだけでした。そこで、FDマウントやFマウントは、「シャッター優先AE」があり、自分のKマウントのエントリー機はそれがなく、悔しい思いがしました。ちょうど「多分割測光」のはしりの時期で、Fマウントの「世界初」のオールインワンのカメラを欲しいと、子供ながら思っていました。

 そのメーカーの、レンズのリストに、名前の違う、58ミリという中途半端な焦点距離の、F1.2のため、法外な値段のレンズがありました。その命名理由も、その最大の特徴も知らずに。

 その名「ノクト」は、夜想曲ノクターン」から命名され、夜景を綺麗に撮るために、精研削非球面レンズなど当時としては究極の加工技術を施した、プロでも一呼吸置く究極の標準レンズで、普通の妻子持ちにはとても手が出ない逸品でした。増して、子供が買うなどと言うことは、絶対にあり得ない値段のレンズでした。

 しかし、マニュアルフォーカスレンズで、間もなくやって来たAF化の波の中、AF用に再設計されることもなく、いつの間にか製造が中止され、私もその名を忘れていました。

 それから30年、この58ミリが、再び設計されるなどということを、一体誰が考えたでしょうか?勿論リバイバルでも十分なセールスを期待出来ますが、現在可能な非球面技術も用い、最新の設計で新製された、新たな時代の標準レンズとなりました。自然に設計すると、一番小さくなってしまう焦点距離でもあり、「大きくない」という声も聞かれますが、従来の50ミリと比べても大きくなるよう設計され、光学性能も究極と思われ、当時のレンズが手に入らない以上、可能なら手に入れたい逸品でしょう。申し訳ないですが、妻子持ちには無理な値段で、有閑紳士になるのを待つしかありません。

  画像は、昼は勿論、夜景が美しく、ナノクリでフレア、ゴーストも低減され、勿論AF-S50mmシリーズも悪くはありませんが、やはり究極のレベルと言うべきでしょう。値段以外では、買って後悔はしないと思います。

 ただ、どうせやるなら、既存の50ミリにも、ナノクリは出来ないのか、とも思うのですが、シンデレラにそこまでは出来ないのか、それとも同士討ちになってしまうのでしょうか。それも覚悟で、今の倍の値段でも買う人はいるというのは、無理な考えなのでしょうか。正直、20万超のレンズは、職業カメラマン以外は普段使い出来ず、日常的にナノクリの威力を感じるのは、そういうレンズだと思うのですが。

 因みに、ノクト58mmF/1.2は、現在オークションでは大体30万前後で出ており、Dfが出てしまった今、クラシックレンズ市場に火が点いてしまい、今後暴騰の一途でしょう。その金額は、私のボーナスとドッコイドッコイ、他の楽しみを止めるわけにも行かず、やはり無理です。有閑紳士になったら、という夢ですね。

 それでは、次回をお楽しみに。